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【社長の徒然草:10号】輸出展示会への挑戦
新型コロナが世界中で猛威を振るったこの2年間で、時計の針が止まったように開かれることがなかったお祭りやイベントも2022年の声を聞いてから徐々に復活の狼煙が上がり始めてきた。
弊社では、2022年5月にタイ王国で行われた東南アジア地域最大級の食の展示会『タイフェックス』と6月に東京ビックサイトで行われた『“日本の食品輸出”EXPO 2022』にそれぞれ初めて出展した。
弊社の基本的役割は、国内産地の生産者の地道な努力に報いる為に、また美味しい物を消費者にお届けする為に厨房で日々研鑽に励まれる料理人の方々を有機的に繋ぐことであり、これからも変わらない弊社の中心軸である。
この10年で、世界からの日本の見え方が少し変わり、いわゆる『MADE IN JAPAN』は自動車や家電といった製造業が牽引してきた時代から、日本の食材、更には料理の分野においても『ものづくりNIPPON』として世界から厚い信頼を頂いていて、一度、観光等で日本を訪れた方々が、日本で『触れて』『食して』『味わった』ものや文化は、しっかりと記憶深くに刻み込まれて、何度も訪れたいリピーターとなり、自国の日常でも取り入れて頂いてその地域の方々にも広く拡散して行っているのが見て取れる。
日本の人口が減少局面に入り、これからは日本を訪れる海外の方々を大切にお迎えすること、更には日本が優位性を持った希少性のある日本の食材 もっと言えば文化を貴重な資源として輸出することをしっかりと見据えた取り組みが必要と考えた。
日本輸出EXPOには、タイ、シンガポール、香港、台湾、ベトナム、マレーシアといった世界各国の国々から一万人を超える方々が来場された。
弊社ブースにお見えになった方々は皆さん日本の食材探しに余念がない様子で、サーモン、ウニ、ホタテ,いくらといった水産品はもとより、牛肉、豚肉、抹茶、こだわりのリンゴジュース等をしっかりと味わい、お話をされていかれた。
とりわけ、弊社では、産地の顔がはっきり見える形で日本のこだわりの生産者が汗水たらして努力した結晶とも言える本物の国産食材をご提供していたので、関心が高かったものと拝察する。
寿司、焼肉、しゃぶしゃぶ,天ぷら、とんかつ、ラーメンといった日本料理は世界中で確かに根付いて来ているものの、その主たる原料は量と価格が起因して外国産地の食材に依存していて、日本の本物とは似て非なるものであり、より深遠なる文化がその味に隠されているのだ。
翻って 日本の産地を見渡してみると、就業人口が減少し、生産量が年々右肩下がりになっているものが多い。
水産業の例で言えば、就業者の高齢化は深刻でかつて世界有数の水揚げを誇った我が国の生産量は30年以上の間、右肩下がりを続けている。海洋資源の枯渇が原因かと思われている方もいらっしゃるかと思うが、実は韓国は20年の間微増、ロシアに至っては就業平均年齢は30代、最新鋭の新造船が沢山作られて生産量は右肩上がり、2015年にはかつての水産大国日本は生産量でロシアに追い抜かされている。
皮肉なことに世界中から熱い視線を浴びているはずの日本の農林水産業のお膝元では、高齢化と後継者不足による生産量の減少が続き、産業の疲弊は極めて深刻な事態に追い込まれている。
農林水産業に加えて、その加工においても中国や東南アジア各地の安い賃金に押されて国内加工は、高い労働賃金と人員不足により衰退の道を歩んでいる。それを補うべく近年は東南アジア諸国から日本の国内加工場への就業者が増加し、皮肉なことに『ものづくりNIPPON』の現場を支えているのだ。
先日、タイの大手飲食店チェーンを束ねる企業と商談をしてみると、ご案内の通り現状では日本料理店の食材も大部分が、海外原料海外加工のものとなっていた。しかしながら、彼らからの強い要望は、例えコストが高くなっても、美味しい日本食材を安心安全な日本で加工したものを直接日本から購入したいというものであった。
世界の視点に立って見ると、改めて日本の潜在価値に気付かされるし、我々の取り組むべき方向性も見えて来るような気がする。
まさに、汗水流して一所懸命に生産する日本食材を日本人のマインドと技術で企画指導し、海外人材の手を借りながら心の籠る丁寧な国内加工という足腰のしっかりとした生産流通体制の確立が必要不可欠な国家的重要課題ではないかと考える。