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2021年4月24日

【社長の徒然草:3号】本物の「味」

 昔、金沢の近江町市場を歩いていると、ズワイガニが軒先に所狭しと並んでいる。良くのぞいて見ると地のものと書かれた1万円のもの、その横に3,000円の北海道産のもの、最も安い1,000円の輸入の冷凍ズワイガニと並ぶ。札幌の中央卸売市場でも毛ガニは前浜ものとロシアものでは、せりに2倍以上の開きがある。これらの価格差はひとえにカニを良く知る地元の人々が、その価値の違いを表現したものと言えよう。
 寿司ネタの人気商品に目を向けてみよう。イクラは時期が早すぎると皮が破れてしまって冷凍することができない。時期が遅くなると俗にピンポンと呼ばれ、皮が固くなる。最も良いイクラは、皮が冷凍に耐えられて、口に入れても残らないもので、わずか2~3週間の間に獲れるものに限られる。ウニとひと言で言っても北海道前浜の一級品と、輸入の簾価品では市場のせりでその価値は3倍以上の開きがある。それはまさに味・甘さの違いである。
 鮮魚の場合は、地ものと呼ばれその地域で珍重されるいわゆるブランド品は、種類の上では他の産地のそれと同じである。しかしながら、育つ海の環境(海流の流れやエサの豊富さ)によるものなのであろうか。味がひと味もふた味も異なる。大分の城下カレイ、金洲の地キンメ、石川のノドクロ(赤ムツ)などが好例である。
 宝石でも家具でもワインでも、同じようなものが何十倍もの価値を持つことはよくあることだ。試してみれば一目瞭然、その違いが明確になる。魚の世界でも本物とそれ以外の物は似て非なるもの/別ものなのだ。
  最近、活〆にした魚の歯ごたえ(食感)や養殖物の脂の乗りを美味しいと表現する声をよく耳にする。我々日本人の「食」の感覚が変わりつつある。しかしながら本物には本物しかない「味」がある。もう一度素材本来の持つ「味」に目を向けてみては如何であろうか。

代表取締役社長 柿澤克樹

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